電線③ 鳥はなぜ感電しない?電気の性質のおはなし

さて、今回は電線の第三回目ということですが、電線編はこれにて一旦終了となります。
前回電線② 電線が三本あるのはなぜ?では、電線が三本ある理由を見ていきました。
今回は日常の疑問を織り交ぜて電気の性質に迫っていきたいと思います。
テーマは「鳥はなぜ感電しないのか?」です。

どうして鳥は感電しない?


何の気なしに電線を見ていると、鳥の大群が休憩に留まっている姿を見ることがありますね。大量に留まっていっては大量に飛び立っていく姿は極々当たり前の光景です。

ですがここで電線コラム第一回を思い出してください。
電線には高圧の電流が流れています。おまけに鳥が留まっているのは大抵高圧線ですから、6600Vという非常に高い電圧です。
にもかかわらず、鳥が焼き鳥になることもなく電線を留まり木代わりできるのはなぜなのでしょう。
理由を知るついでに、電気の性質についても見ていきましょう。

 

 

電気の性質

電気は水に近い性質を持つとよく例えられます。
そもそも電圧や電流が何を差すのかピンとこない方も多いかと思いますので、水と照らし合わせて見ていきましょう。

(1)電圧とは

電圧は文字通り電気の圧力のことです。
水は高いところから低いところに落ちると物理法則で決まっていますが、電気も同じです。
電気も電位(=水位のようなもの)の高いほうから低いほうに流れます。この高さの差異が電圧と呼ばれるのです。
要は、「電圧が高い」とは「めちゃくちゃ高い場所から電気を流している」ことだと考えてください。

(2)電流とは

電流はそのまま、電気の流れのことです。水の流れの強さ弱さをイメージすると分かりやすいかと思います。

さて、ここでオームの法則を持ち出しましょう。
あまり聞きたくない単語かもしれませんが、この法則で述べられていることは簡潔です。

●電流は電圧に比例する電圧が高ければ電流も大きくなる
電圧が高くなれば流れる電流の量も多くなります。
高電圧=高いところからすごい勢いで水を押し出していると考えれば、流れる水の量が増えるのも道理ですよね。

●電流は抵抗に反比例する抵抗が小さければ電流は大きくなる
これも当然のことですよね。
電気の流れを水道に見立てれば、抵抗とは蛇口のようなものです。
抵抗の小さい=大きな蛇口ならば水はたくさん流れますし、抵抗の大きい=小さな蛇口ならば水は少ししか流れません。

なんとなく電気というもののイメージを持つことができたでしょうか?

 

 

電気が流れるためには通り道が必要

さて、ここでもう一つ重要な性質があります。

電気というのは、通り道がなければ流れることはありません。
乾電池で豆電球を点ける実験をやったことはありますでしょうか?あれは+側でも-側でも導線を電池から離すと、豆電球は点きません。豆電球を+側にだけ繋いでも、何の反応も示してくれませんよね。
このことからも分かるように、電気とは行って帰れる道がなければ流れてくれないのです。

なお、水と電気は似た性質を持っていますが、この点だけはまったく違っています。
水は流れたら流れっ放しで、流した水がまた蛇口に帰ってくることはありません。
ですが、電気は違います。電気には行って帰ってくる道が必ず必要になるのです。

 

 

鳥が感電しない理由

さて、ここで電線に留まる鳥を見てみましょう。

今回はこの雀くんを例に取ってみます。

いま、雀がちょこんと高圧線の上に乗っかっているとします。この状態で電気が雀に流れることはありません。
なぜかというと、この状態では電位差が存在しないのです。
電圧の項で「電気は高いところから低いところに流れる」とご説明しましたが、逆に高低差がなければ電気は流れないのです。

とっつきにくくて嫌な感じがしますが、再度ここでオームの法則を用いてみます。

電流=電圧/抵抗

今回の場合、雀がちょこんと乗ってる程度の抵抗はほぼ0とみなされますので、抵抗=0となります。
これを式に代入すると電流=電圧/0となり、結果電流も0となります
ですので、そもそも電流が流れません。
つまり、電位差は0です。

加えて、電気はより流れやすい方向に向かうという性質があります。
わざわざ電気の通りにくい雀の体を経由するよりも電線を通ったほうが電気は流れやすいので、雀が感電することはないのです。


ですが、雀が二本の線を跨いでしまったときには話が別です。
線を跨ぐことにより電位差が生まれ、雀は感電することとなります。
先の豆電球の例を思い出してください。
電線の上に留まっている状態は、電源が繋がっている状態で導線に触っているようなものです。
ですが、二線を跨ぐ状態とは、雀自身が導線となって電源と繋がるに等しいのです。

そうなれば雀の体には電流が流れ、遭えなく感電…ということになるのです。

 

 

おわりに

そんなわけで、鳥は一本の線に留まっているときは感電しないけど、二本の線に触れると感電する、ということでした。
電気について、少しでもイメージがしやすくなりましたでしょうか?

 

さて、電線に関するコラムはこれにて一旦終了となります。
普段見慣れている電線ですが、実は様々な仕組みが備わっていたんですね。
次回からは配電編となります!
>>配電① 配電!電気はどうやって家に届く?【TCSコラム】

東北制御でした