【モータ編(6)】交流モータの原理を知ろう!三相誘導モータを分かりやすく解説【後半】
こんにちは、東北制御です。
前回【モータ編(5)】交流モータの原理を知ろう!三相誘導モータを分かりやすく解説【前編】では誘導モータの基礎原理まで進みました。
今回はそれを活かし、三相誘導モータの仕組みについて解説していきます。
三相誘導モータ
前回までで、導体の周りで磁石を回転させると、導体も回転することが分かりました。
しかし、実際のモータでは磁石を回転させることはしません。
そうではなく、非常に巧妙に三相交流を用いることで、磁石を回すのと同じ状態を作り出しています。
なんと、磁石を動かさずに磁石を回転させるのです。
この仕組みは非常にややこしいので、ゆっくり順を追って見ていきましょう。
三相誘導モータのしくみ
まず、三相誘導モータの構造はこのようになっています。
真ん中に入っているのは導体の棒です。この集まりが、さっきまで見てきた円盤だったり、磁石の真ん中に置いていた物体だと考えてください。
これらはかご回転子と呼ばれます。
それらを取り囲むよう、円状にコイルが配置されています。このコイルは対でワンセットとなっており、AとA‘は内部で繋がっています。
斜めから見るとこんな形になっています。
Aと同様に、BとB‘、CとC‘もそれぞれ内部で繋がっています。
三相誘導モータでは、このA、B、C各セットに、それぞれ別々の三相交流を流します。
三相交流の波形と見比べながら考えてみましょう。
Aには電流aを、Bには電流bを、Cには電流cを流すことを仮定します。
まず、Aのコイルが時間(1)のとき、電流は+向きに流れています。Bも+、Cはーです。
次にAとA‘に流れる電流の向きを考えてみましょう。
電流は+からーに流れるので、電流が+のときは手前から奥へ流れ、―のときは奥から手前に流れます。
「手前から奥へ流れる時」を×、「奥から手前へ流れる時」を●と表します。
すると、各場所のコイルは、各々こんな状態になります。
ちょっと分かりにくいので、順を追って考えていきましょう。
どうしてこうなるかというと、電流はプラスからマイナスに流れ・かつAとA‘は連続した一つのコイルだからです。
AとA‘は繋がっているので、Aが正のときはA’から電流が出て行く形になります。
「電流は+からーに流れる」っていうのは、このモータ編で何度も登場したお約束ですね。
グラフ中でaが+なら、「Aは+」で「A‘はー」になり、グラフ中でaがーなら、「Aはー」で「A’は+」になります。
単純に、入るときが+なら、出て行くときはーになるというそれだけのことなんです。
磁界はどうなる?
電流が流れているということは、磁界が発生します。
なら磁界はどんな形になるのでしょうか。
ここで登場するのが【モータ編(1)】誰でもわかる電磁石!磁界と電気の関係を知るで登場した、右ねじの法則です。
さっきの図をもう一度見てみましょう。
(1)のとき、コイルには各々こんな向きで電流が流れているんでしたよね。
「手前から奥へ流れる時」が×、「奥から手前へ流れる時」が●です。
ということは、各磁界はこんな風になっているわけです。
ここで再度、第一回を思い出してください。ばらばらに存在する磁界をまとめたことがありましたよね。
今回もあの要領で磁界をまとめると、こんな形になるのです。
磁界が片一方から片一方に向かう形になります。
なんだか見覚えがありますね。
そう、磁石です!
今、N極とS極が生まれ、中央の導体(かご回転子)は磁石に挟まれた状態になります。
磁石を使っていないにも関わらずです。驚きですね!
さらに次の瞬間を見ていきましょう。
(1)と同様に、時間(2)、(3)、(4)の時を考えます。先ほどと同じように考えていくと、各電流の向きと磁界はこのようになります。
時間(2)
時間(3)
時間(4)
なんと!磁石が回転していることがお分かりいただけるかと思います。
磁石を回していないにも関わらず、磁石を回したと同じ効果が得られるのです。
結果、アルゴの円盤と同じ原理でもって、中央のかご回転子を回転させることができます。
以上が三相誘導モータの仕組みとなります。
三相誘導モータは大きな電力を使用できるので、ポンプや送風機など、大型の機械を使用する場合に広く使用されています。
おわりに
そんなわけで、三相誘導モータの仕組みを見てきました。
電磁誘導、電磁力を巧みに利用し、更には三相交流の性質までを絡ませて誘導機を作ることに成功しています。
間違いなく天才の発想ですね。
今回はモータ編で学んできたことの集大成とも言える内容でしたが、ご理解いただけましたでしょうか。
難しいと感じたら、モータ編第一回から順を追って見ていきましょう。
東北制御でした。